中国人は何故、持ち家にこだわるのか? ~中国人の不動産信仰について

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うちの会社の中国人が結婚して家を買ったらしい。

聞けば、深センの少し郊外の中古物件(二手房)で、頭金が30%、あとは20年ローンで返済していくのだそうだ。1平米2万元(35万円)くらいの物件らしいが、それでも深センでは安いそうで、都心で新築だと同じような物件でも、もっと高いのだそうだ。

今までこういうパターンを何度となくみて来たが、とにかく彼らは、持ち家にこだわるし、結婚したらすぐに購入する。しかも、不思議なのは、彼らのサラリーでは、到底手が出ないものでも買ってしまうということである。

(冒頭写真)ドラマ「蜗居」より

本来、買えるはずのないものが買えてしまうという中国人の不思議

 不動産屋の前で自撮り(写真)

日本人にとっては不思議なことなのであるが、中国人は、本来、その人の収入だけを見ると、買えるはずのないものを買ってしまえたりする。例えば、車とか、アイフォーンとか何でもそうなのであるが、「君の収入で、何でそんなものが購入できる?」というようなものを手にしていることがある。
一般に、サラリーマン社会である日本の場合、その個人のサラリーという収入ベース(年収〇〇万円)で人間を評価しがちであるが、中国人の場合は、それにはあてはまらない部分がかなりあるようだ。

で、家もその一つ。

一般に、不動産を購入する場合は、その個人の年収の5-10倍くらいが望ましいと聞いたことがある。
しかし、例えば、深セン市内で一般的な200-300万元(4000-6000万円)の物件を買うとして、彼ら夫婦の世帯収入が仮に月10000元(20万円)であったとしても(これでもマシな方だと思う)飲まず食わず働いて返済したとして、200-300ヶ月、つまり17-25年かかることになる。
あくまでも、ざっくりの計算であるが、一般に、若い世代(80後-90後)だけの収入では、絶対無理である。

しかし彼らは実際に家を買っている。

それは何故かといえば、やはり親に頭金等、かなりの部分を負担してもらっているというのが、一番大きいようである。
うちの講師の場合も、やはり同様で、親と親戚がかりで、頭金をそろえたようである。一般に、若い世代の中国人は六つの財布を持っているといわれるので、彼らにお金が無くとも、何とかなってしまうということなのだろう。

世代間格差という言葉があるが、中国の場合、こういう形で、年寄りから若者に、お金の融通が行われており、一種の世代間金融と呼べるかもしれない。ただ、親がお金を出す分、年頃になったときの、本人のプレッシャーのかけられようがすごく、また友人もその頃のなるとどんどん結婚してくれるので、結婚せざるを得ないというのが現状のようである。
その点は、日本よりも、家族や親子という縦の関係がかなり強く、保守的といえば保守的なのであるが、ある意味、健全だとはいえる。

房子(家)の奴隷にはなりたくない! ~多様化する中国若者の価値観

ただ、そうはいっても、やはり20-30年のローンは組まなければならないわけで、毎月の給料の中から、相当な部分を拠出しなければならないのは確か。
そうすると、場合によっては、ただ家のローンを返すだけの為に、働くような生活になってしまい、全く、何の為に生きているのかわからないという所謂「房奴(ファン・ヌ)」(房子(家)の奴隷)状態におちいっている人も結構、多いと聞く。

この点については、中国人によって、考え方はいろいろで、特に80後(バーリンホウ)、90後(ジューリンホウ)といった若い世代の中からは、「今の生活を、そこまで犠牲にして、家にこだわるのはいかがなものか?」という考えの人間もポツポツでてきているようだ。
そういう若者は、海外旅行だなんだと今の人生を謳歌しているようで、いわゆる月光族(サラリーを月末に使い果たしてしまう人)も結構いたりする。

要するに今を大事にするか、将来に備えるかという永遠のテーマであるが、これまでは何がなんでも家を買って(买房)という価値観であった中国人であるが、今後、不動産も何倍にもなることは考えにくい状況では、若い世代を中心に、彼らの価値観も多様化して当然ではないだろうか。

中国人の不動産信仰はどこから来るか?

とはいえ、一般的な中国人にとっては、不動産というのは、やはり高かろうが、安かろうが、無くてはならないものであるようである。不動産といっても、中国の場合、土地そのものを買えるわけでも無いし、要するにマンションなのであるが、その情熱たるや、日本人の比ではない。それは、一種の信仰といっていいほどである。

一般に、中国は不動産バブルだと言われて久しいし(20年位前からいわれている)、自分が中国へ来た10年前から、すでにゴーストマンションは、深センのあちこちにあった。しかし、弾ける弾けるといわれつつ、なかなか弾けないのは、上記のような中間層の底堅い需要があるということもあるのだろう。こういった「実需」があると、多少、経済に歪みがあっても、回っていくという例が、今までの中国なんだと思う。

では、中国人がどうして、そんなに不動産購入に熱心なのか?といえば、やはりこれまで、上がり続けてきたという事実があるからに他ならないと思っている。

中国は、基本的には今でもインフレ世界であるし、中でも、不動産の値上がりは更に早く、すぐに、二倍、三倍となってしまうような状況では、「不動産はずっと上がり続けるもの」という意識が非常に強いし、これまでは、実際にそうだった。

端的にいってしまうと、中国で早期に家を買った人間ほど、勝ち組になっていたりする。それはもう、購入が早ければ早いほど良くて、そういった状況を、常に見せつけられている中国人にとっては、できるだけ早く購入したほうがいいという意識になるのは、無理もない。(実際、深センに、早期に来た人は、かなり裕福である。)
逆に機会を逸したほうは、なかなか辛いものがある。例えば、中国人で、日本など海外へ長期間行って戻ってきてみると、大学の友人とかは、皆、中国で不動産を買って、それが何倍にも値上がりしている状況で、自分は家を買う時期を逃してしまったというような、そんな人もいた。それは中国の発展時期に上手く乗れなかったということだ。

大家の権利がひたすら強い中国 ~法律的な背景も

あと、中国人が持ち家にこだわる理由として、中国では大家(房東/ファンドン)の権利が非常に強いということがある。
仮に大家が「来月から家賃を上げるので、無理なら出て行ってくれ。」と言われれば、借家人はすぐにでも出ていかなければならない。「いや、自分にも居住権があって・・・」とかそういう抗弁はできないようである。
中国の場合、そのほとんどがマンションということもあって、居住権という発想になりにくいのか、そもそも個人の人権を守る意識が希薄だからかはしらないが、マンションの所有権者である大家の権限が絶大のようである。
要するに、賃貸の場合、中国人にとって、それは自分の家ではなく、世を忍ぶ仮の宿というくらいの意味しかないということである。
中国人が家を買いたがるのは、こういう法律的な背景もあるようである。

その点、借地借家法という法律で、借家人の権利がかなり保護されている日本ではまだ「借家であろうが、持ち家であろうが、自分の家は自分の家」という考え方を持つことは許されているような気がするのだが、どうであろうか。

参考動画


タイトル「蜗居(かたつむりの家)」とは狭い家の意味。2009年頃のドラマ 第六話 优酷网(中国語)
冒頭のシーン(2-4分)、ある姉妹が、分譲住宅の即売会に行くものの、周囲の中国人の爆買いパワーに圧倒されてしまい、結局は買えずじまい。炒房団で有名な「温州人」が買い占めているという噂も流れている。
「ショッピングモールの9割引クリアランスセールより怖いかも。」という妹(郭海藻/李念)に対して、「バーゲンは値引きがあるのに、ここは値引き無しでコレだからね。」と姉(郭海萍/海清)。二人してすごすごと会場を後にする。

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