穹顶之下 under the domeを見てみた Ⅰ

under the dome
「穹顶之下(UNDER THE DOME)」を見ました。
といってもスティーブンキングのTVドラマの方ではありません。中国で最近、環境汚染をテーマに、CCTVの元記者が告発した動画のことです。かなりのダウンロードを記録したらしいですが、例のごとく、突然、当局によって停止されたようです。
自分が探したときは、すでに全編動画が検索でかかりにくくなってましたが、かろうじて1つだけ残っていた鳳凰衛星(フェニックスTV)の動画を見れました。
もしかしたら、これも消されるかも」と思ったので、一応、念のために動画を保存じておいたのですが、案の定、翌日、消されてました。結局、その日以来、中国国内では見れなくなっているようです。(ただ、YOUTUBEでは見れます)
結局、内容があまりに現実すぎるということと反響が有りすぎたことで、当局の方が「まずいぞこれは!」ということになったのでしょうかね。しかし、中国政府は、先日、全人代で、李首相が「環境保全は待ったなしの状況になっている」というような発言をしていたはずなんですが、どうなってるんでしょうが?言ってることとやってることが反対のような。

というわけで、以下がその動画についてです。

穹顶之下(under the dome)


柴静/『穹頂之下』 中国のPM2.5問題ドキュメンタリー【日本語字幕】 – YouTube
日本語字幕付きの動画がありました。

「穹顶之下(UNDER THE DOME)」というのは、柴静(チャイ・ジン)という元CCTVの女性記者が自らの経験を土台に、中国の大気汚染の発生のメカニズムや人体への影響、さらには環境汚染の発生源である工場やそれを管理すべき環境部や石油会社などの取材を元に、制作した告発的な動画です。
数字や論証を積み重ね、政府関係の要人へのインタビューを行ったりしつつ、パネルを巧みに活用して、タンタンと事実や論証を積み重ねています。

柴静って誰?

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柴静(チャイジン)という人ですが、あまり、よくわかりませんが、CCTVの記者やってて、以前から、そこそこには有名な方だったらしいです。
http://baike.baidu.com/view/58494.htm(中文)
ただ一つだけ気になったのは、自分の子供をアメリカで出産していることで、子供の将来のことを考えて、そういう風にしたのでしょうが、動画を見ている分では、北京で出産しているように見えるので、このあたりで、ネット上では、議論があるようです。
さすがに、現在アメリカで生活しているわけではないと思いますが、それでも、自分の子供には、別の道を用意しておいた上で、中国の空気のことを憂えているというのは、ちょっとどうなのかな?という気がしないでもありません。中国から逃げ場のない一般中国人からすると、所詮、金持ちのたわ言といわれてもしょうがないですね。
でもまあ、私生活は私生活として、そういったことを差し引いた上でも、なかなか興味深い動画であるし、意義は大きいと思います。

以下、動画の大まかな内容についてです。

そもそものきっかけ(動画0分)

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動画は2013年初頭の北京のPM2.5の濃度のグラフ曲線から始まります。当時、柴静氏は、記者として各地で大気汚染について取材しており、当時でも、大気汚染は、既に25の省と市にまたがり、6億人に影響していたということですが、偶然の気象条件によってもたらされていると言われており、彼女自身も時折、喉の調子が悪く、寝苦しいくらいの印象しかなかったのだそうです。
しかし、北京に帰った後、妊娠に気がつき、生まれる子供が、良性の腫瘍があり、生命の危機に瀕することがあったそうで(その後、子供は回復)、子供を持つ親になって、空をみたときに、この空気を子供がずっと吸い続けると思うと、怖くなったいうことです。

星を見たことが無いという子供 山西省の汚染状況(動画3分位~)

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ここから2004年当時、彼女の故郷の山西省を取材した時の回想となります。
山西省は炭鉱が多いところですが、その山西省の孝義村というところで、女の子に「星や白い雲を見たことがあるか?」という質問に「ない」という返事をされたときのエピソードが紹介されています。
その時案内してくれた責任者が、「孝義村は山西の縮図であり、山西省は中国の縮図である。」といっていたことが、10年後、まさに現実となっていることで、自分の子供に、その当時の女の子の姿を重ね合わせ、暗澹とした気持ちになったということのようです。

アンダー・ザ・ドーム(動画5分過ぎ)

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次に、アンダー・ザ・ドームというアメリカのテレビドラマを引き合いにだし、結局、我々は逃げる事の出来ないドーム(穹顶)の下にいるようなものなのではないかと言っています。
そこは汚染物質が充満する外の世界とは、完全に遮断された中の世界で、子供は、汚染の充満した外の世界をガラス越しにしか眺めることができないというわけです。
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そういう状況の中、自分の娘が、ガラス越しに外を見ながら「外にはいったい、何があるの?」「それは、自分を傷つけるの?」という質問を発する娘に対して、答えを考えることが、大気汚染と向き合うきっかけになっているようです。

雾霾(汚染された霧)とは何なのか?(動画6分)

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ここで提議に入ります。

〇雾霾(汚染された霧)とは、いったい何なのか?
〇どこから来ているのか?
〇我々はいかに対処すべきか?

雾霾(汚染された霧)(ウーマイ)というのは、最近になって出てきた言葉のようで、電子辞書には載っていませんでした。ほこり、チリのようなものが、霞、霧状になった一種の状態を指すようです。ここでは「雾霾」とよんでおきます。
その霧は、例のPM2.5というもので構成されており、その20倍になってようやく目で見えるようになるということです。いわば、見えない敵と戦っているようなものだというわけです。そこで、それを可視化するために、PM2.5計測器なるものを、24時間もって調べたところ、一日あたりの呼吸によって吸い込む空気中の汚染物質の濃度305.91μg(1μg=10の-6乗)だったそうです。
その中には、癌を引き起こす可能性のある物質(致癌物)が充満していて、そういった物質の濃度は、北京は世界標準の14倍だたっとのことです。

PM2.5とは?(動画10分~)

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その雾霾(ウーマイ)を構成するのが、日本のメディアでも、取り上げられる機会が多いPM2.5ですが、アニメーション風で、PM2.5が人体に進入すると、どういう影響を引き起こすかが再現されています。PM2.5自体は、小さいものであるが、それが鎖状につながっていて、そこに重金属だのなんだの、ロクでもなさそうな物質がまとめてぶら下がっているようなイメージのようです。
本筋と直接は関係ないですが、このアニメのナレーションがちょっと変わった感じだったので、京劇関係の人かなと思って調べてみると、この「左なんとか」という人は、変わった経歴の芸術家のようです。
左小祖咒

大気汚染と病気の関連(動画13分)

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調査によれば、大気汚染が原因で亡くなるケースは、中国で毎年50万人ということです。中でも、最も犠牲になるのは、子供と言ってもいいでしょう。動画中では、生まれて間もないのにすでに肺炎を起こしている赤ん坊もでてきます。

そのような状況に対して、免疫力をつけさせるために、子供をあえて外に出せばどうなのかということですが、それに対して、科学者は、はっきりとNOといっています。そんなことをすると、体の機能を損傷するだけで、何のメリットもないということです。
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また、全くタバコをすった事の無いのに、肺癌になった患者(50代、女性)の手術の話もでてきます。(動画15分)
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医者によれば、この患者の肺癌と大気汚染との極めて強い因果関係にあるということですが、癌というのは、長い期間潜伏期間があるはずで、どうして、この患者は、急に癌になったのかという疑問が浮かび上がります?そこで、NASAからの衛星写真を提供してもらったり、各所から調べたりしたところ、どうも2004年当時から「雾霾」(汚染された霧)の存在はあったということがわかってくるんですね。
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これは当時のTV報道で、霧(きり)による原因で北京首都空港で飛行機が遅延したというニュースですが(動画18分)実際は単なる「霧」ではなく「雾霾」(汚染された霧)だったということです。当時は、柴静氏も記者として、各地の汚染事件に多く関わっていたが、北京都市部で発生している、こういった現象については、単なる霧という認識だったとのことです。また記者として大気汚染を取材している側であるとばかり思っていたのが、何のことはない、自分自身が大気汚染の当事者だったのだということです。

ここで、少し中国の歴史をさかのぼっています。
開放政策と経済発展に伴い、空気汚染は進み、2006年あたりから、中国では二酸化硫黄など主要な汚染物質を規制する方向で動いており、実際、その効果は上がってきている。がしかし、それとは逆に、PM2.5のような細かい顆粒状の汚染物質が増えていったとのことです。
2012年にいたって、ようやくPM2.5が大気汚染物質としての監視対象となり「国家大気汚染防治行動計画」の実施されるにいたり、世間に認知され始めたというわけです。日本で、中国からPM2.5が飛来してくるとかいって、ワイワイ騒がれだしたのは、この後からですね。

本来の自然と人間の関係(動画21分~)

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ここで、柴静氏はこう続けます。
人間というのは、本来、春夏秋冬の移り変わりにあわせ、新鮮な空気を吸いたいと思うのが自然であり、それが出来なくなっている現在のほうが、異常なのだと。
この一年、起きてからまずやるのは、携帯電話のアプリで、空気汚染の指数を確認するということだと彼女は言います。何をするにしても、マスクをして外に出かけなければならない。さらには、家の戸に目張りをする。何故そこまでするかというと、自分と霧との間の「私怨」(個人的な怨念)といってます。

雾霾pm2.5はどこから来るのか?(動画23分~)

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次に、そのpm2.5はどこから来ているのか?

その60%はやはり、化石燃料、つまり石炭(煤メイ)、石油(油ヨウ)の燃焼によるものであるとのことです。
歴史的な経緯から言うと、石炭は19Cのイギリスから、石油はアメリカや日本といった先進国が既に排出してきているので、中国固有のものではないが、中国の場合、そういった化石燃料の燃焼量が甚大であることから(欧州の3-4倍)なおさら影響が大きいということである。
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ロンドンの事例(動画25分)

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ここで、歴史的な経緯に目を向けると、今の中国と同じように、石炭を莫大に消費していたのが、1860年代のイギリスで、彼らもまた、そのために、重大な代償を支払っているといいます。当時のロンドンでは、マスク無しでは何一つできず、大気汚染が原因で亡くなった人は12000人にも達していたとのことです。また当時はPM2.5の数字こそないが、二酸化硫黄の濃度は世界標準の190倍だったということです。

河北省の事例(動画28分)

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北京という大都市に、汚染物質が蔓延しているのは、主に、北京の南側にある河北省から流れてきてくるものが、かなりの部分であるようです。
河北省は、俗に「中国第1、河北第2、唐山第3、アメリカ第4」といわれるくらい、鉄鋼の生産量が多い場所であり、そして鉄鋼を生産するには、大量の石炭を燃やさなければなりません。中国での消費量36億トンのうち、河北省だけで3億トンもの石炭を消費しているとのことです。

唐山の製鉄所(動画30分)

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中でも唐山という街(唐山大地震で有名)は、石炭の消費量が極めて大きな街で、そこに取材に行ったときの様子がでてきます。

国家環保部の責任者の話(動画31分)

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環境部の責任者に尋ねたところ、たとえ違法だとしても、そのような工場は取り締まることができないというのが現状だという。鉄鋼の需要が少なくなっているとは言え、こういった鉄鋼会社というのは巨大な雇用の受け皿になっており、そう簡単には、停止なんてさせられないのである。まあ、それはそうでしょうね。

華東地区他について(動画33分)

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あとは中国の他地区、上海などの華東地区やハルピンなどのことについてもとりあげています。やはり、汚染の状況は酷いようです。
(写真、紅い丸が全部、基準値を超える、発電所、鉄工所、などである。)

また一概に石炭といっても、いろいろあって褐煤(ハーメイ)という質の悪い石炭を燃やすと町中、霞で前が見えないほどになるといいます。
また、冬の汚染の毒性は、夏の汚染の25倍にも達するということです。
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結局のところ

中国の石炭による大気汚染には、以下のような問題があるということです。

〇消費量が莫大
〇劣悪な石炭を使用している
〇清掃しない(石炭による汚染の場合、清掃で、かなり減少するとのこと)
〇排出量をコントロールできない

グラフによれば石炭の燃焼量とPM2.5濃度は、ほぼ比例しているとのことです。

参考ページ

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日本に飛来するPM2.5の様子がリアルタイムでわかります。
http://www.tenki.jp/particulate_matter/
PM2.5分布予測 – 日本気象協会 tenki.jp

自分の実感

一概に中国といっても国土が広いので、自分が住んでいる南部の深センについて言えば、華北のように酷い状況ではなく、中国の中では、比較的マシなようです。ただ、いつもどんよりと曇っている日が多く、すぱっと晴れる日が少ないという印象は有ります。
先日、日本に帰ったとき、やはり「日本の空は青くて、雲は白い。」と感じました。また、空気も新鮮な気がしました。まあ都心部に出なかったので、余計にそう感じたのかもしれませんが。
しかし、思えば自分が小さい頃、日本の高度経済成長の真っ只中でしたから、光化学スモッグ注意報なんかしょっちゅうあって、グランドには出られない時も、度々ありましたし、「水俣病」「四日市ぜんそく」など公害訴訟というようなものも、真っ盛りだったような気がします。
しかし、そこから、環境に対する配慮が徐々に図られるようになり、日本は、かなりエコ化が進んだ国になったと思います。(ただ、原発事故は起こってしまいましたが。。)これは、ただ自然にそういう風になったのではなく、やはり公害に対する意識の高まりによって、勝ち得たものであると思います。
中国もおそらく、そういう段階というか、その何十倍のすさまじい規模で、おこっているのだと思いますが、それがもう待ったなしの状況になっているということなんだと思います。

穹顶之下(under the dome)を見てみた Ⅱ に続く

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