芙蓉鎮~豚のように生き抜け 文化大革命期の中国

furongzhen

 

胡玉音(劉暁慶)右、と秦書田(姜文)・左

文化大革命ついでにもうひとつ。
先の「紅色娘子軍」は、文革真っ盛りの1970年製作であったが、毛沢東の亡き後、文化大革命を客観的に捕らえなおす動きが出てくる。中でも以下の映画などは、非常に文化大革命をリアルにとらえている。

以下、旧ブログから転載です

芙蓉鎮 Hibiscus Town(1986年)豚のように生き抜け 文化大革命期の中国


芙蓉镇Hibiscus Town.1986 YouTube

芙蓉镇 腾讯视频

文化大革命がいかなるものであったかを、ユーモアを交えながらも、これほど見事に捉えている作品もないだろうと思うのであるが、この作品は、文化大革命時代の湖南省芙蓉鎮を舞台に、時代の波に翻弄されながらも、たくましく生きていく登場人物たちが、リアルかつユーモアに描かれていてすばらしい。文化大革命という時代背景はあるものの、政治的なメッセージ性は前面には出さず、時代を生きる人物を淡々と描き出している。そのリアルな描写が却ってこの時代を浮かび上がらせている。

圧巻は、主役の胡玉音(劉暁慶)秦書田(姜文)とが、互いに右派、富農というレッテルを張られ周囲の偏見にさらされながらも親密の度合いを増していく課程であろう。出演の劉暁慶(リュウ・シャオチン)姜文(ジャンウェン)は、もう説明の必要もない大女優、大俳優であるが、微妙な男女の距離間を心にくいくらいの演技で魅せてくれている。

今回、再度見たが、実は二人のシーンは非常に長く、後半はいつの間にか恋愛ドラマに変化している。このあたりの部分だけ見れば、文化大革命も楽しいのではないかと錯覚してしまいそうだ。また劉暁慶という女優さんは、感情表現がとんでもなく上手く、リアリティありすぎである。彼女の演技により、胡玉音が秦書田へ傾倒していく様子が、手にとるようにわかるのだ。また姜文は、映画の中では劉暁慶(32歳)より年上の大人の男を演じていたが、実は若干24歳というのが驚きでもある。

しかし、幸せな時間は長くは続かない。秦書田は再度捕らえられ、労働刑10年間を命じられる。彼が刑務所に連れて行かれる時、女に語った言葉、「像性口一样活下去(豚のように生き抜け)」は、視る者に強烈な印象を残すだろう。(性口は、牛馬の意?)時代の波に翻弄されながらも、とにかく自分の本心をひた隠し、馬鹿の振りをして生き抜く秦書田の根性というものは、並みではない。

今、ものや食べるものがあふれ、物質的な繁栄を謳歌する中国に居ると、この中で描かれている中国の農村が、同じ中国とは到底思えない。恋愛するのも命がけ、結婚するのに党の許可書が必要とは、今の80年代以後生まれの若者には想像もできないだろう。
※ちなみに、劇中さかんに出てくる米豆腐(ミー・ドウフ)は、湖南(湘)の木桶飯屋でメニューになっており、自分もたまに食べるが、結構旨い。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%99%E8%93%89%E9%8E%AE
芙蓉鎮(1987年) – Wikipedia(あらすじ有り)
http://www.sakawa-lawoffice.gr.jp/sub5-2-a-306fuyouchin.htm
映画評論 芙蓉鎮

映画中、「階級闘争」「自己批判」「紅衛兵」「富農」「右派」など、とにかく聞きなれない単語がいっぱい出てくる。多分、この映画を見るときには、背景となる「文化大革命」というものがわからなければ、ぴんと来ないのではないだろうか。また、映画は表現が割りとソフトにまとめているが、現実はもっと凄惨なものであっただろうことは、容易に想像がつく。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1317194278
中国の文化大革命について分かりやすく教えてください。 Yahoo!知恵袋

現在、経済発展著しい中国で生活している自分からすれば、たった30~40年前にそんな歴史があった、というのはにわかに信じがたいことである。同じ期間での、日本の変化と比較すると、あまりにも激しすぎる。(日本は、自分の子供の頃と今を比べても、社会構造にそれほど劇的な変化は無い。)
しかし、逆に言えば、こういう時代に二度と戻りたくないというところが、今日の中国の経済発展の原動力になってきたのではないだろうか。今、確かに、経済の停滞が言われ、貧富の格差の増大、不動産バブル、役人の腐敗、拝金主義の横行など、今まで経済発展の裏に隠れていた負の側面がクローズアップされてきてはいる。しかし、この文化大革命の記憶がまだ生々しく残っている限りは、中国の老百姓(一般民衆)は、容易に過去を振り返らないのではないかと思う。今の生活は決して楽とはいえない、しかし、あの地獄のような時代に逆戻りすることだけはご免だと・・・・

簡易年表

1949年 中華人民共和国成立  蒋介石政権は台湾に
1950~53年 朝鮮戦争
1958年 大躍進運動 人民公社設置。
1963年 この頃は、劉少奇などの改革により、経済が復興し始めていた頃。
物語冒頭、湖南省芙蓉鎮、胡玉音夫婦で営む米豆腐の店のシーンはこの辺り。
1964年、四清運動
党から政治工作班(物語では李国香)が送り込まれ、反体制者や資本主義者を追及。
党の大会、秦書田、玉音夫婦も吊るし上げに遭う。玉音夫婦は家、仕事、財産すべて失う。
1966年 文化大革命、始まる。劉少奇、鄧小平は自己批判。
物語では、玉音、秦らだけでなく李国香も「ニセ者の左派」として、批判される一方で王秋赦は「文革の忠実な戦士」として、支部書記に昇格。
玉音は書田の子を宿し、結婚。書田は懲役10年の労働刑に処せられる。 玉音、出産。
1971年 林彪クーデター失敗。
1972年 ニクソン訪中  日中国交正常化
1976年 毛沢東 逝去 四人組(四人帮)逮捕
1978年 鄧小平体制確立
1979年 経済特区設置深センなど四都市)
この頃、物語では、玉音の名誉は回復され、家もお金も返却される。玉音と書田の米豆腐の店は、再開。

付記

また、次のような本もある。 芙蓉鎮 (電影中国語) 八木 章好, 胡 志〓

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