卓球やめますか?それとも中国人やめますか? 卓球移民という選択肢

chire-koyama
小山ちれ

さて、日本でも、福原愛石川佳純両選手の人気ぶりに伴って、にわかに卓球が人気復権中であるものの、やはり本家の中国には、まだ及ばないように思う。
というのも中国では卓球人口が多く、人気、実力ともに備わった、いわば国技ともいえる存在だからである。

卓球移民という存在 中国卓球事情

たとえば、現在の世界ランキング(以下)にしても、このように、いまだに実力者が上位を独占している。
http://www.tibhar.jp/wr.htm

中国のナショナルチームとしてオリンピックあるいは世界選手権に出場するというのは、針の穴を通す難しさで、ある意味、卓球を志す人間としては、不可能に近い確率なのだ。そのため、かなりの実力のある選手でも、国内で埋もれてしまうというジレンマがあった。

そのためか、そういった選手は、むしろ中国国内を出て、他の国の選手として世界大会に出場するという卓球移民を選択するようになっており、香港、シンガポールはおろか、アメリカ、オーストラリアやヨーロッパの国籍をとって、その国の代表として出場する中国人が多くなっているようである。
彼らのような元中国籍の海外選手は「海外兵団」と呼ばれる。

中国人の同窓会と化す国際試合

昨年の女子世界杯の参加16人中13人はいわゆる「海外兵団」でありその数は、増える一方であるという。(中でも、ある一人の選手にいたっては、アフリカ代表として参加しているが,どう考えても、彼女が普段の生活をアフリカで送っているとは考えにくいという。)
また例えば、先日の世界卓球2008の女子、中国対アメリカの試合で、団体戦の主力選手3人+3人、計6人すべてが中国人という、実際のところは、中国第一対中国第二といった状況だったという。
そんなものが、いったい国際試合といえるのか?という問題が出てきているようなのである。
15th Asian Games Doha 2006 Table Tennis 帖亚娜(ティエ・ヤ・ナ 香港)
pingpong-yimin2 李佳薇(リ・ジャウェイ シンガポール)

移民手段としての卓球

こういう状況に接した時、我々日本人としては、「そこまでしてオリンピックに出たいか?」というのが通常の日本人の感覚ではないだろうか。日本人的に言えば、日本国籍を捨てることは、日本人をやめることと同義になってしまうからである。

しかし、中国は違う。

卓球やめますか?それとも中国人やめますか?と聞かれた場合。中国人やめます。というのが、彼らの選択肢だったということだ。いや、むしろやめたいというのが彼らの本音なのかもしれない。(というか彼ら自身、国籍を変えただけで中国人をやめたとは思っていないだろう。)

オリンピックや世界選手権の舞台に立ちたいということもあるのだろうが、卓球を手段として移民できるということもあるのかもしれない。
また、それに対する周囲の反応も「国を捨てやがって」という国賊扱いというのはある一方で、どこかで彼らをねたましく思っているところがある。ナショナリズム中華主義を標榜しつつ、中国から脱出したいと心の片隅で思っているというのが中国人の本音なのかもしれない。

それにしても、どうして中国人というのはああもあっさりと自国籍を捨てて、中国人をやめてしまうのであろうか?
例えば日本人が海外に長年住んだとして、日本国籍をわざわざ捨てて他の国の人間になろうとは思わないだろう。永住権はともかく、帰化してその国の人間になろうとまでする人間はまれだろうし、その必要性もないだろう。裏を返せばそれだけ日本という国が、それだけ恵まれているということなのかもしれない。

卓球移民が、周辺諸国のレベルアップに貢献

ただ、逆に、そういった卓球移民の存在によって、皮肉なことに周辺諸国の卓球レベルのベースアップがはかられるという結果につながっている。中でも香港、シンガポール、韓国そして日本といったアジア諸国がメキメキと力をつけているようである。

日本では、古くは池田銀行の小山ちれというのがいたが、最近では男子は韓陽(帰化)、女子では金沢(帰化)が入ったことによって日本のレベルアップに貢献しているようである。
pingpong-yimin3 日本人となった韓陽選手

こういう周辺地域のレベルアップこそが中国卓球界が望んでいた図式なのであろう。一時期、中国が余りにも強すぎて、他国に追随するところが無く、世界選手権などがまったく面白くも何とも無くなってしまったという流れがある。
当たり前である、ドラマでは敵役がいてこそ、盛り上がる。
いつでも中国同士で同士討ちでは面白くもなんともないからである。中国のドラマでは日本という敵役が必要なように、スポーツでもそれが必要であることに気がついたのではないだろうか?

卓球移民 規制の方向へ

しかし、現在、事態はちょっと思わぬ方向に進んでいるようで、今度は移民を規制する方向に向かっているようである。以下、レコードチャイナの記事より

2008年1月24日、国際卓球連盟(ITTF)のアダム・シャララ会長は中国人選手が次々と他国の代表になっている現状を規制するプランを示した。瀋陽日報が伝えた。
先日開催された韓国卓球選手権女子シングルで、元中国籍の唐娜(タン・ナー)選手が優勝、北京五輪出場権を獲得した。唐選手は「唐[シ内]序(タン・ルイシュー)」という韓国名を取得したと伝えられ、また朝鮮日報に「今では韓国が私の故郷。」と韓国への愛国心を示したことに中国国内では波紋が広がっている。ただし中国卓球チームの黄飆代表は電話で唐と話し、記事の文章は誇張されたものと聞いたという。
pingpong-yimin4pingpong-yimin5唐娜と海外兵団
日本でも元中国籍の韓陽選手が五輪代表に選出されたが、現在世界中に元中国籍の選手が代表の座を獲得している。昨年の女子ワールドカップでは参加した16選手のうち13人が元中国籍だったという。
広東省広州市で卓球世界選手権の組み合わせ抽選会に参加中の国際卓球連盟(ITTF)のアダム・シャララ会長は、21歳以上の選手は新たに国籍を取得してもその国の代表にはなれないという規定を設ける意向を示した。(翻訳・編集/KT)

さて、上記の事件は、唐娜”叛国”事件という形で、中国では今大会の一つの焦点であったようである。
冒頭の日本対韓国戦の福原愛の涙の勝利の裏側では、中国のマスコミの最大の関心は、負けた唐娜の一挙一動にあったのだとか。この事件、第二の小山ちれ事件に発展するのではないかと懸念されていたというのであるが、現在のところそうはなっていないようである。
pingpong-yimin6 日本代表としてプレーする小山ちれ(旧姓:何智礼)

こういった卓球協会側の規制に対し、
「強いんだからオリンピックや世界選手権に出たって、いいじゃないか。」というような反発するような動きも当然あり、そういった海外移民について肯定派も結構根強いようである。

海外兵団 関連サイト

http://japanese.cri.cn/81/2008/03/12/1@113833.htm
世界の卓球界が変わっていくのか?中国国際放送局

http://2008.qq.com/zt/2008/killoversea/
乒联主席“谋杀”海外兵团–体育频道–腾讯网 (中文サイト)

http://2008.qq.com/zt/2008/overseas/index.htm
从唐娜到奥运国球海外兵团–腾讯奥运–腾讯网  海外兵団の写真とプロフィール一覧(中文)

反日感情、ここにも

しかし、他国であればともかく、日本人になって中国で卓球の試合に出ると言うのは相当の覚悟がいるのではないかと思っていたら、やはり昨日、こういう事件があったようである。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080227-00000000-nks_fl-spo
反日応援に宮崎監督が怒り/世界卓球(日刊スポーツ) – Yahoo!ニュース

 すばらしいプレーも台無し

加油(ジャーヨウ)加油」というロシアの選手へのコール。そしてヤジ、嘲笑。むちゃくちゃである。
ヤジの内容はわからないが多分、汚い言葉であろう。
(中国語は日本語などと違って、ののしる語彙が豊富らしい。もちろん世界一である。)
中国人にしてみれば、帰化選手というのは中国の国籍を捨てて日本人になりやがった国賊だという憎悪がある一方で、(それはある意味、日本人それ自体よりも、厳しい目を向けられているのではないだろうか)スポーツという一芸に秀でることによって、移民という選択肢が取れ中国を脱出できる彼らに対するねたみ、羨望が入り混じって、複雑な感情になるのだろう。
pingpong-yimin7  大和魂を見せた吉田海偉

しかし、そんな中国人の野次に対しても吉田は負けてはいない
最期に吉田が勝ったときに、中国人?の客席に向かって「お前ら、これを見ろ!」と目で制すようにしていたが、さすが元中国人?!だけはある。またそれくらいの根性がなければ、かつての祖国中国で試合などできないであろう。また実況もその吉田に同調するかのように「日本の吉田、日本の吉田・・・・」を連発していたのがおもしろい。

それは別として、卓球というのはメンタルの比重が非常に大きいスポーツであり、しかも客席と競技場が圧倒的に近いわけで、その中でそういう野次を容認しているというのは、客や主催する側の神経を疑ってしまう。

自分は中国に住まわしてもらっているし、中国人のおおらかさと言うのは好きなのであるが、それが悪い方向に出てしまうとこういうことになってしまう。もう少し大人になってもらいたいものである。

また、こんな掲示板も・・・・・・
pingpong17
http://tieba.baidu.com/f?kw=%BC%AA%CC%EF%BA%A3%CE%B0
百度贴吧_吉田海伟

こちらは、とにかく罵詈雑言に満ち満ちていそうな掲示板である。
http://tieba.baidu.com/f?kz=331418886
吉田海伟,你就是吉田阳痿 (吉田海偉、お前はまさに吉田イン○テンツ)

要するに、中国人の面汚し、国賊というようなコメントが圧倒的ななかで、下のような意見もあった。

5. お前たちはまさに奴に嫉妬しているだけだ
もし君たちにある国が国籍を与える機会があれば
誰よりも積極的に、大きな尻尾をつけた狼を装う必要がある。
どんな国籍であれ、それは生活環境を代理することしかできない
自分の環境や発展の道にさらに適合するものがあれば、
どんな人間であれ自分の選択肢を持ちうる。
俺は、強烈に吉田海偉を支持する

よく意味はわからないが、とにかく吉田を支持するという意見である

你们就是嫉妒,要是你有外国的给你加入国籍的机会,你比谁都得积极,装什么大尾巴狼!
什么国籍,那只能代表你的生活环境,有更合适自己的环境和发展的道路,
每个人都可以有自己的选择!
强烈支持吉田海伟!

卓球 関連記事

世界卓球2017 中国の養狼計画と平野美宇 2017年6月12日
2017年世界卓球。今回、個人的な注目は、やはり平野美宇対中国女子。アジア大会で、平野美宇に三連敗を喫した中国女子が巻き返しを図るか。勢いに乗る平野が、アジア大会の再現をはたすのか?
日本式ペンホルダーは死んだのか? 2017年6月27日
シェークハンド全盛の今日。絶滅寸前となりつつあるペンホルダー卓球。ペンホルダーは、時代遅れなのか?アテネ五輪金メダル、ユスンミンのプレーを通して、ペンホルダー卓球の可能性を探っていく。

 その他、関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA