日本式ペンホルダーは死んだのか?

ユスンミン(柳承敏)右 2004年アテネオリンピックにて

卓球を再び見るようになって十数年、日本がだんだん、強くなっていくのは嬉しいし、最近は、平野、張本を中心とする若手の伸びが著しく、完全に、中国対日本という図式になってきている。

しかし、一方で、何か足りない。抜け落ちているような気がしないでもない。それは何か?考えてみるに、やはり

ペンホルダー、おらんやん!」なのである。

そう、今の卓球はシェークハンド全盛で、ペンホルダーは絶滅寸前ということだ。

「いや、ペンホルダーいるだろう、例えば、許昕とか。」

まあ確かに、丸型の中国式ペンホルダーは、今も健在だ。現役では、許昕がいるし、その前は、馬琳(マーリン)や、王浩(ワンハオ)なんかがいた。
しかし、自分が言っているのは、角型の日本式ペンホルダーのことだ。日本式と中国式では、形も違うし、裏面を使うか使わないかも違うし、同じペンホルダーとはいえ、似て非なる存在だと思う。

とにかく、あの日本式ペンのラケットを使っている選手を、卓球放送で全く見かけなくなった。最近では、吉田海偉と韓国のユスンミン(柳承敏)くらいしか、記憶にない。現役で使っているのは、自分の知っている範囲では、いない。(自分が知らないだけ?)
ペンホルダー – Wikipedia

自分が、学校のクラブ卓球をやっていた80年代は、むしろペンホルダーのほうが、やや多かった気がする。なぜなら、それが当たり前だったからだ。確かに、片面だけしか使えないというのは、両面使えるシェークハンドよりも不利だし、不合理に感じることも無いではなかったが、まあそんなもんだと思っていた。、

80年代前半は、もう日本の往年の全盛期は過ぎていて、中国全盛期に入りかけていた頃であったが、中国だって、江嘉良曹燕華、など、チャンピオンは中国式のペンホルダーを使っていたし、今のように、両面は使ってなかったと思う。卓球の教則本でも、伊藤繁雄小野誠二など日本式ペンホルダーは枚挙に暇はなかった。

ペンホルダー、いつの間に、消えてしまったのか?

それは、自分が卓球から遠ざかってしまった、80年代後半から90年代にかけてに答えがあるようだ。その頃、男子卓球を席巻したのが、ワルドナーなどを中心とするヨーロッパ勢で、当然シェークハンド。一方で、中国式ペンホルダーの伝統というのも、もちろん継続していた。そして90年代は日本卓球は停滞期。

結局、日本卓球の衰退とともに、日本式ペンホルダーも衰退してしまったということだ。そして、ここへ来て、卓球日本が復活の兆しを見せているものの、それはかつての姿(ペンホルダー)ではなく、シェークハンドになっていたということである。
「最近の日本卓球は、確かにすごい。しかし・・・・」みたいな。

ペンホルダーというのは、本当に、時代遅れの打法なのか?

そのあたりを、しるには、以下の動画を見てみるとよいだろう。

ペンホルダーは時代遅れの打法なのか?

日本式ペンホルダーといえば、やはり韓国のユスンミン(柳承敏)を取り上げない訳にはいかないだろう。アテネオリンピック、金メダリストにして、ペンホルダーキング。シェークハンド全盛の今日において、めずらしく日本式ペンホルダーで頂点を極めた男。まさに男のなかの男、「漢」である。

かれのプレーを動画で見ていると、日本式ペンホルダーでも、今でも十分に通用するんじゃないかと思わせてくれるところがある。とにかく、どれだけすごいかということを、口でいってもしょうがないので、以下の動画をご覧いただければと思う。

ユスンミン対 王皓  2004年アテネオリンピック


ユスンミン対王皓 2004年アテネオリンピック男子個人決勝 YouTube ドイツ語

ユスンミン対王皓 2004年アテネオリンピック男子個人決勝—优酷(ドイツ語)全編

これほど、血湧き、肉躍る卓球の試合も珍しいのではないだろうか。

オリンピックの男子決勝という大舞台。いがぐり頭の野球少年風が、韓国のユスンミン(柳承敏)WR3位、このユが使っているのが日本式ペンホルダー。かたや中国の王皓(ワンハオ)WR4位。は中国式ペンホルダー。

珍しく、ペンホルダー同士、しかも中国人対他国人選手の対戦。さらには、韓国のコーチ、キムテクス(金泽洙)と中国のコーチ劉国梁も、選手時代は宿命のライバル。これで、盛り上がらない訳はない。異様な熱気で包まれる会場。そして、二人とも、最初からハイテンションでとばす。

ちなみに、対戦成績では、これまで王皓がユスンミンを圧倒していて、過去負け無し(生涯成績でも22勝2敗)しかし、この日の、ユスンミンは神がかっていた。左右への素早いフットワークを武器にボールを拾いまくり、強烈なフォアハンドで相手のコートに叩き込む。とにかく、これほど、ペンドライブの力というものを、見せつけてくれる試合はないのではないか。

試合は、終始ユスンミンのペースで進むが、主導権を奪われつつも、粘る王皓は、5ゲームを土壇場で逆転、さらには6ゲーム目も9-9で追いつくものの、最後は、ユの意表をついたレシーブに対応できず、力尽き、ゲームオーバー。

ちなみに、王皓は、アテネで負けてから、北京、ロンドンと個人で決勝に進むものの、いずれも敗退。(北京では先輩の馬琳に、ロンドンでは後輩の張継科に)ついに、オリンピックでは金メダル(個人)には恵まれなかった。それは彼の輝かしい競技人生に一抹の陰をおとしている。

また、ユスンミンのほうも、この試合以降は、まあ強いことは強かったが、このときほどの神がかった強さはなかったと思う。


関係ないが、ユスンミンも登場する「ペンホルダーは死なず」(卓球王国)という、超レアなDVDがあるらしいが、その中の最後のメッセージで「卓球というスポーツがある限り、ペンホルダーは死なない。」といっているらしい。「わが、ペンホルダーは永久に不滅です」みたいな感じだが、確かに、彼のプレーを見ていると、そう思わせてくれるものは十分にある。

日本式ペンホルダー 復活の可能性はあるのか?

しかし、日本式ペンホルダーで、メダルとるような奴ができこないものだろうか?このシェークハンド全盛の中で、単面ペンホルダーで、メダルとったりしたら、もうそれだけで、英雄視してしまいそうだ。日本のナショナルチームの中に、一人くらい、混ぜておくのもありかと思う。

ただ、ことはそれほど簡単なことではない。というのも、ペンとシェークでは、打法が違いすぎるので、互換性が余り無いからである。つまり、ペンホルダーでうまくいかなかったからと言って、明日からシェークにするとか、簡単にはできないのである。

ということは、温泉卓球レベルなら、いざしらず、仮にも、将来、卓球で飯を食っていく勢いであれば、五、六歳といった小さなときに、ペンか、シェークかを決めなければならないということだ。そこで、ペンホルダーを選ばせるということは、このシェークハンド全盛において、人生を棒に振るに近い行為かもしれないのである。

日本式ペンホルダーの泣き所

ペンホルダーの特徴を一言で言えば、フォアハンドの強いラケットと言える。シェークが、フォアバック両方、オールラウンドで打てるのに対して、ペンはあくまでフォアに重心のあるラケットなのである。

つまり、その強力すぎるフォアハンドと引き換えに、あまりにも貧弱なバックハンドという泣き所をもっているのである。従って、その泣き所を、どうやってカバーするかが問題になる。

ユスンミンの場合、その強力なフットワークによって、ほとんどをフォアでカバーしたし、中国式ラケットのように、裏面にラバーを張って使えるようにするという方法で弱点をカバーすることもできる。ペンの裏面は、シェークと違って、使いにくいとは思う。しかし、それでも、許昕(写真)みたいに、バックからドライブをはなつことも可能になった。

しかし、日本式ペンホルダーの、あの単面しか使わない潔さも、魅力があるし、実際、不可能とまでは、言い切れない。まあ、あの強烈なフットワークがあってということなのだろうが・・・

現役ペンホルダー選手

冒頭でも言ったが、日本式ペンホルダーを使っている日本人選手を、ほとんど見かけなくなってしまった。ここでは、日本式とは違うが、ペンで単面しか使っていないという意味で、ドイツの、シャンシャオナ(单晓娜)を、取り上げてみる。

シャンシャオナ(单晓娜)

男子に比べて、さらにペンホルダーが少ない女子卓球において、ドイツの、シャンシャオナ(单晓娜)は、かなり異質な存在である。
元々は、遼寧省鞍山出身で現在34歳、世界ランク18位。プレイを見てみると、丸型の中国式ペンであるが、裏面は使わず、単面しか使っていない

プレースタイルも独特で、バック側は、ショートとツッツキでしのいで、浮いた珠があればスマッシュする。簡単に言えば、それだけである。非常にシンプルで、オールディーズな卓球。また、台の前で殆ど動かず、かなりの省エネ卓球とも言える。

更に、打っている時の音を聞いていると、カコン、カコンと、板にボールが当たっているような音がするので、もしやと思って調べてみると・・・やはり、ラバーは表ソフトラバー。

単面ペンホルダーで表ソフト。

このご時世で、いさぎよすぎ。しかも、この卓球スタイルで、世界ランキング上位をキープしているというのであるから、大したものだ。おそらく、カバーしきれないボールは諦めて、自分のできる範囲内は、しっかりやるということなのかもしれない。まあ、一種の大人の卓球といえるだろう。

ちなみに表ソフトは、以前、自分も使っていたが、珠の回転に対して鈍感で、自分で回転をかけにくい分、相手からの回転にも左右されない性質がある。また、反発力があるので、球足が早くなる傾向がある。回転より、スピードに重点のある打法に向いている。
シェークで攻撃型の場合、通常は、両面裏ソフトだろうが、伊藤美誠のように、バック側を表ソフトにしている例もある。ただ、ペンホルダーで、表ソフトを単体で使うというのは、このご時世では、やはり異色といっていいだろう。

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