世界卓球2017 中国の養狼計画と平野美宇

今更だが、世界卓球が終わった。

結果からすると、中国選手との差は、まだあるが、昨今の日本卓球は若手の台頭が著しく、目をみはるものがある。
今回、以下の卓球のライブ中継サイト(2017杜塞尔多夫世乒赛-直播+(www.zhibo.tv))で、試合を見ていたが、中国のネット民(網民)の間では、中国選手同士の場合を「内戦」、日本選手との試合のことを「抗日戦」といっているようで、「最近、抗日戦がかなり増えているよなあ。」というのが、彼らの偽らざる感想といってもいい。

卓球は、ここ十年以上、中国の一強状態が続いていたが、ここへ来て、男女とも、中国対日本という図式がでてきた。中国CCTVの解説を聞いていても「日本」という単語がポンポン出てくる。中国から見ても、東京オリンピックを背景に、日本勢の台頭を脅威と感じているようだ。

ただ、一方で、卓球王国中国にとって、これは望ましいところでもあるのである。

「狼が来ることは、望ましいことだ。」 養狼計画と平野美宇

卓球は「国球」と呼ばれ、日本で言えば、相撲のような国技に近い存在である。いわば国策競技なので、国民の振興を図るためには、中国の国家チームを強化し続けなければならないことは言うまでもない。
しかし、90年代からこれまで、中国はあまりにも強くなりすぎてしまった。メダルをとるのは、いつも中国、海外の選手も元中国人だらけ。これでは、卓球という競技自体がますます、マイナースポーツ化してしまう。中国としては、いくら自分の国が強くとも、卓球という競技自体が地盤沈下してしまっては元も子もない。

そのため、中国は「養狼計画」と銘打って、他国にコーチなどを派遣したり、他国の選手を中国に招いたりするなどの活動に普請してきた。養狼計画というのは、2009年に中国卓球協会の蔡振華氏が提唱した、卓球全体を振興する活動である。

ゆえに、日本の躍進自体は、彼ら中国人的にも大いに望むところなのである。ただし、それはあくまでも、対抗馬としてであって、中国側としては、艱難辛苦を乗り越えて、最後には、中国選手が劇的な勝利を治めるというシナリオは崩したくない。

しかし、先日のアジア卓球で、平野が、その不文律をあっさり崩してしまった。中国主軸相手に三連勝。しかも、中国のお膝元の無錫でだ。あれでは、中国側のメンツ丸つぶれである。

要するに、本当に、狼が来てしまったのだ。


劉国梁コーチは、アジア卓球の後、「狼が来ることは、望ましいことだ。」といった。そして、中国女子卓球チームは、平野の影武者まで使って秘密訓練して、対策を練ってきた。
そして迎えた今回の世界卓球、平野に対して中国女子卓球が、今回、どう巻き返しを図ってくるのか?は大会で一番の焦点といってもよかった。

平野美宇と丁寧 女子シングルス準決勝


Miu Hirano vs Ding Ning | WS | WC2017 – YouTube

まあ、結果から言えば、今回は丁寧の完勝。4ゲーム目以外は、終始、丁寧のペースで、平野のペースにさせてもらえなかったという感じ。今回、アジア大会と違ったのは、丁寧が、平野の攻撃パターンや速度に、かなり対応できていたということだろう。
クロスからクロスのたすきがけ攻撃で、丁寧のフォアをノータッチで抜く場面も少なかったし、逆にすごく厳しいコースをつかれたりと、今回の丁寧は、確かに一味違っていた。


また、メンタル面でも、丁寧は、序盤から気合を前面に押し出すようにしてプレーしていたし、最後は、プレーに集中する余り、マッチポイントを間違えてしまうほどだ。(最後に大ボケをかましてくれた丁寧

逆に、平野は思い通りにならず、苛立つ場面が目立った。丁寧の対応力が勝っていて、途中から打つ手がなくなったという感じにもみえた。メンタル面でも、今回は、平野の方にプレッシャーがあったのかもしれない。
というわけで、結果としては、今回の丁寧の勝利で、中国のメンツは一応、保たれた形になった。

換骨奪胎 平野美宇の打法について

それにしても、平野の打法について、アジア卓球のときから思っているのは、「どうしてあんなに力強い珠を打てるのか?」ということだ。

とにかく、ビシッ、ビシッという感じで、球に力がある。こすって回転を与えるのではなく、叩く打法だ。しかも、珠を早い時点でとらえるので、弾道は早くて低い。相手を一撃で抜き去る力をもっている。打点の速さに加え、スイングする前の引きつけが強い感じがする。

ちなみに、平野の中国人コーチである(張成さん)によれば、中国スーパーリーグの後、半年をかけて、打法を練り直したらしい。(「換骨奪胎」という言葉を使っている。)従来、回転7スピード3だったのを、回転3スピード7にしたのだそうだ。そうでないと中国選手には勝てないと感じたらしい。(写真「乒乓世界」2017年6月号より)

また中国選手とフォアでラリーをして打ち負けないのもいい。あのへそを出しながらのフォア、あれは、手打ちではなく、身体をいかに回転しているかという証拠である。一般的に、日本の選手は、バックハンドはいいのだが、男女ともに、フォアの打ち合いになると、必ず、中国に負けるが、平野の場合それはない。
あと逆に、相手に、身体の中央を攻められたときでも、上体をひねって、サイドを切るようなコースに返球できたりする。あれは不思議というより他ない。

平野本人は、自分の卓球のことを「あるある卓球」だと言っているが、全然「ありえない卓球」である。卓球のスケールが大きいので、まだまだ、発展する余地はありそうだ。

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世界卓球2017 中国の養狼計画と平野美宇」への2件のフィードバック

  1. まじを

    はじめまして、質問させて下さい。2017年の兵超、中国卓球超級リーグはいつ開催されるかご存知でしょうか?中国卓球協会のHPにはお知らせがありません。9月中旬説と10月中旬説がありますがどれが本当なのか。
    よろしくお願いいたします。

    返信
    1. 老板老板 投稿作成者

      こんにちは。中国人に聞いたりしながら、調べてみましたが、やはり、2017年の中国卓球スーパーリーグ(兵超)の日程は、まだ決まってない感じですね。とりあえず現在行われている「全运会」が終わってからという感じなんでしょうか。
      何か動きがあれば、またブログでも取り上げてみたいと思います。よろしくお願いします。

      返信

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