広東語って、中国語とどこが違うの?

cantonese

さて深センは、長い夏が続いています。夏は嫌いではないですが、こう長いとさすがにダレてきますね。四季のある世界が恋しいです。

自分の住んでいる深センというのは、一応、広東省に属しているので、街に出てみると、普通話(北京語)とともに、広東語もかなりの割合で聞こえてきます。

今回は、香港、広東省のローカル言語、広東語について、ざっくり語ってみたいと思います。

広東語 普通話とどこが違うのか?

まずはじめに断っておきますと、一般的に、我々が「中国語」と呼んでいるのは「普通話」というもので、北京とか北方で話されている言葉をベースにしているので「北京語」という場合もあります。(その他、欧米では「マンダリン」、台湾では「国語」、シンガポールでは「華語」と呼んでいます)

一方の広東語粤语ともいう)というのは、主に広東省、香港、マカオ(澳门)、さらには世界各地の華僑社会でも広く使われているローカル言語です。ローカルと言っても、公用語になってないというだけで、全世界で使われており、1億人以上が使用しているので、かなりグローバルですね。

また、広東語というのは、普通話とは一応、別の言語であって、方言ではありまえん。あくまで「語」であって、「弁(なまり)」ではないです。例えば、方言の場合、関西弁と九州弁の人間が、そのまま方言で話しても通じることは通じますが、広東語の場合、広東省以外の中国人には、聞き取れないこともあります。だから、一応、普通話とは別の言語です。

では、全く違う言語か?というとそうでもなく、所詮同じ華語なので、他省出身の中国人も半年くらい広東省で生活すると、大体は聞き取れるようになるようです。なので、広東語は、方言ではないが、全く違う言語でもないという、微妙な位置にある言語で、いわば親戚言語と言っていいかもしれません。

マルチリンガルな広東人

guangdonghua-kejia 客家土楼

一口に広東語と言っても、香港、広州、そしてそれ以外で話されている言葉については微妙な違うようです。場所によってかなりなまりがあるし、広東には、さらに潮州人、客家人(ハッカ)という独自の文化があり、潮州語、客家語が話されていて、同じ広東人でも、理解不能なのだそうです。
彼らは、自宅では客家語、友人とは広東語、学校・会社では普通話、さらに日本語や英語を使用するという、生まれながらにしてマルチリンガルです。

客家で思いつくものといえば、やはり客家土楼でしょうが、客家系の人は、広東省に普通に存在します。客家人として、有名なところでは、鄧小平、李登輝、あと、シンガポールの故リークワンユー(李光耀)なんかもそうですね。著名な政治家ぞろいと言った感じです、

guangdonghua-lijiacheng  
一方、潮州(潮汕)人ですが、東方のユダヤ人と呼ばれることもあるとのことで、アジア一の富豪李嘉诚(写真)なんかを輩出しています。またグルメ評論家の蔡澜なんかもそうです。多分、商才にたけているのかもしません。
潮州人は、いわゆる大男子主義(亭主関白)で有名で、男は俺について来いタイプ、女は物腰が柔らかい人が多いらしいです。自分が出会った潮州人も、まあ実際、そんな感じでした。

ちょっと、脱線しましたが、一口に広東、広東語といっても、かなり複雑みたいだと言うことです。

広東語の発音

声調について

guangdonghua-shengdiao
広東語も、やはり母音、子音と声調があり、そのあたりは、普通話と同じです。しかし、普通話の声調が4声であるのに対して、広東語の声調は6声(あるいは9声)とも言われています。たとえば、シーという音ひとつとってみても第1声から第9声もあり「絲、史、試、時、市、士、式、錫、食」の漢字に対応しています。

以下、千島英一先生の6声方式によれば、以下のような感じです。

1声・・・高 ⇒ 高  へ平らに
2声・・・中 ⇒ 高  へ上げる
3声・・・中 ⇒ 中  へ平らに
4声・・・中低⇒ 低  ~少し下がる
5声・・・中低⇒ 中  ~少し上げる
6声・・・中低⇒ 中低 へ平らに

平らなのが3つ(1声・3声・6声)、上がるのがふたつ(2声・5声)、微妙に下がるのがひとつ(4声)普通話と違って、はっきりと下がる音がないです。
また、1~3声は分かりやすいですが、4~6声はかなり微妙な違いで、全部で6声ではなく5声だという説もあるほどです。

7声、8声、9声については、それぞれ第1声、3声、6声の亜流で、語尾が詰まるだけなので、実質は6声といっていいと思います。例えば、「食飯(セク・ファーン)」の「食」なんかは、第9声ですが、第6声と同じ高さなので、6声に分類してもいいということです。

声調については、普通話の場合もそうですが「これって、4声だったっけ、5声だったっけ?」などと考えていると、もうわけが分からなくなってしまうので、講師やCDのマネをしてしまったほうが、早いと思います。(広東語は特に)

母音・子音 ピンイン

普通話と同じ部分もありますが、南方言語特有の難しさがあります。(詳細は割愛。)

余談ですが、香港人には、主に年配者だと思いますが、普通話のピンイン入力が苦手な人がいます。以前、HSBCに口座をつくりに香港に行ったときに、担当した女性職員が、まさにそのタイプで、自分の個人情報をパソコンに入力するときに、普通話で入力するところがあったらしく、あまりにしどろもどろだったので、自分がイチイチ教えてあげる羽目に・・・・「なんで外国人の自分が教えなあかんねん!」と思ったことは言うまでもありませんが、ピンイン表記も、普通話と広東語では異なるので、こんなこともおこりうるんですね。

文法

普通話と大体は同じですが、「(シン)」などの副詞を後ろに置くなど語順が違ったり、ところどころ、違う部分があります。(詳細は割愛。)

香港の広東語

簡体字と繁体字

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あと、香港にについていえば、中国大陸の簡体字と違って、繁体字という文字を使用します。

例えば、左の写真は、二つとも、HSBC(香港上海銀行)の看板ですが、上が中国のHSBC、下が香港のHSBCです。

また例えば、「広」という字は、繁体字では「」(簡体字では「广」)と言う感じで、とにかく画数が多いのが特徴で、古い中国語の流れを汲むものらしく、香港のほかには、台湾で使われてます。
一度、香港ローカル校の教科書をみせてもらったことがありますが、低学年から、非常に画数の多い文字の書き取りがあり、大変だろうなと思いました。

また、香港の新聞を見ればわかりますが、香港は繁体字であるとともに、独自の漢字がもあります。有冇(ヤウモウ)の「」とか、唔該(ンゴイ)の「」とかですね。

英語からの借用語が多い、香港の広東語

香港の広東語は、さすがに旧宗主国イギリスからの影響をうけているので、英語からの借用語はかなり多いですね。巴士 (バス)、的士 (タクシー)、多士 (トースト)、芝士 (チーズ)曲奇 (クッキー)、三文治 (サンドイッチ)、士多 (ストア)、卡通 (アニメ)・・・・・・・枚挙にいとまがありません。中国語で本来、バスは公共汽车,タクシーは出租车のはずですが、広東省では、香港の影響を受けて、上記のように、巴士 、的士を使う場合もあります。

このような大陸側との、表記の違いが、問題になった例として、以下のようなものが記憶に新しいかもしれません。

「ポケットモンスター」の中国語表記をめぐり香港で抗議デモ – ライブドアニュース

香港では、ポケットモンスターのピカチュウは、「比卡超(ベイカチウ)」という表記でした。しかしメーカー側が、大陸側での「皮卡丘(ピーカチウ)」という表記に、統一しようという動きがあり、香港のファンが「何事か!」と激怒したわけです。
一見すると、過剰な反応に見えますが、ここに、普通話と広東語の違いがからんでくるんですね。たかがアニメのキャラ表記といったって、漢字を変えられると、発音が全く異なってしまうので、キャラのアイデンティティが根本からひっくり返ってしまうというわけです。呼び名も、文化の一つとなって定着しているのですから、

pikachu
 あとは、もちろん、背景に、香港と中国大陸の間の微妙な政治的関係があります。ただでさえ、香港は、中国からの文化的侵食に敏感なので、単なるアニメキャラの改名レベルではないということなんでしょう。

日本語のルーツか?

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「ほほ しゃんはい りょうり」(香港旺角にて)
好好(ホウホウ)は、広東語で、好(大変)好(良い)の意味、普通話では「很好」、英語では「ベリーグッド」の意味になる。 


広東語を勉強していて、ふと思うのは、日本語の音に近い単語が多いなあということですね。有名なところでは、「係(ハイ)」。まあ、電話を受ける時の返事なんですが、うしろで、「ハイ」「ハイ」というので、ドキッとして振り替えると、香港人だったなんてことは、何度かありました。

あるいは「簡単(ガンターン)」とか、普通話では「簡単(ジェンタン)」ですが、「ガンターン」のほうが、より日本語に近い感じですね。

あといくつかの単語を並べてみると、

日本・・・北京語「リー・ベン」 /広東語「ヤッ・プン」 /日本語「ニッ・ポン」
大学・・・北京語「ダー・シュエ」/広東語「ダイ・ホク」 /日本語「ダイ・ガク」
老街・・・北京語「ラオ・ジエ」 /広東語「ロウ・ガーイ」/日本語「ロウ・ガイ」(音読み)

こうして比べると、やはり北京語より、広東語のほうが、日本語に近いような気がしますね。広東語って、もしかすると日本語のルーツじゃない?と、思わせるものはあります。日本人は海洋性民族といわれますが、沿海部の広東省、福建省あたりから、台湾、沖縄など海沿いに伝わったというのは、まんざらでもなさそうです。(まあ、かといって、日本人が広東語の習得が容易かといえば、そんなことは全然ないわけなんですが・・・)

広東語か?普通話か?

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チャウシンチー(周星驰)

あと、香港に来たばかりの人とかで、広東語と普通話を、どちらを勉強すればということもあるかもしれませんが、こればかりは、人それぞれですね。(香港の場合、さらに英語もあるか・・・)

ただ、普通話、広東語の両方ゼロの状態であれば、余程、特別な理由がない限り、普通話を先に勉強するほうが無難かなとは思います。例えば、香港人の友人、奥さんができて、今後、香港に土着化していきそうだとか、チャウシンチー(周星驰)レスリーチャン(张国荣)の映画をどうしても広東語で見たいとか、そういう理由ですね。

というのも、広東語というのは、上でもいったように、発音記号もばらばら、声調も諸説あり、テキスト、参考書の類も非常に少なく、学習しにくいからです。というか、広東語というのは、白話(バイファ/話し言葉)ともいわれるように、そもそも、教室で学習するような言語ではなく、自然に覚えていくような言語なのだと思います。

しかし、香港へ行くとわかりますが、一応、普通話も英語も通じることは通じるには通じるんですが、向こうが話してあげている感というか、そうじゃない感が半端ないんですね。所詮、よそものというか。だから、やはり広東語で話したいなあという気持ちにはさせられます。
ちなみに、自分は、香港へ行くときは、まあ、お店でなにか買ったり、注文する程度ですが、普通話はほとんど使いません。片言の英語と広東語で済ましています。大陸人と間違えられるのが、嫌だというのがありますが・・・・。

結局、どっちやねん!ということですが、まあ「好きにしてください」(結構、投げやり)というしかありません。まあ、事情は人それぞれですから。

ただ、こんな人はいないと思いますが、初心者で同時進行はやめたほうがいいでしょう。発音がぐちゃぐちゃになってしまいます。まず、どちらか一方をしっかりやって(最低1―2年)、有る程度、十分に話せるようになってから、もう一つを始めても十分ではないかと思います。普通話にしろ、広東語にしろ同じ華語なので、どちらかをしっかり勉強していれば、もう一つは後から十分に習得可能です。

広東語の動画

広東語の動画については、また機会をみて紹介してみたいと思います。

広東語のテキスト・参考書

以下、自分が広東語を勉強した時に、使ってみた印象です。日本で販売されている広東語の本は、だいたい、香港の言葉をベースにして、いるようです。
あと、中国の本屋さんでよく売っている、「粤语入門」の類の本は、ローカル中国人向けの入門書であって外国人向けではなく、日本人には無理です。そもそも、説明がすべて中国語なので、「全然、入門ちがうやん!!」になってしまいます。

CDエクスプレス広東語

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広東語は、普通話(北京語)に比較して、質、量ともに、全く教材らしい教材が無いですが、この本は、本文、単語、文法、練習問題といった、NHKの語学講座のようなオーソドックスな構成で非常に取り組みやすいです。広東語を入門から始めたいという方には最適です。

香港粤語(会話、単語、文法)

book-hk
本書は、これまであまりなされなかった日本語で体系的に広東語を説明しようとしているという点では、非常に意欲的なシリーズです。また、香港の新聞からの切り抜きなど、生きた素材をふんだんに取り入れており、興味深いです。ただ、構成が変則的だったり、内容等、筆者の趣味的な部分に走りすぎている感があり、ちょっと使いにくい部分もあります。広東語を、もう一段、つっこんでやってみたいというかたにはいいと思います。

今日粤语

book-yueyu
教材らしい教材が無いローカル広東語教材の中では、しっかりした内容に仕上がっています。ただ、日本語・英語の解説が全く無いので、普通話を一通り学び終えた人向けかもしれません。上冊は日常生活全般の会話、下冊は広東省関連のトピックの読解と言う風に分かれています。香港ではなく、広州の言葉を基準にしているようで、繁体字ではなく、簡体字表記です。(中国国内の書店で販売)

旅の指さし会話帳〈3〉香港

book-hongkong
ベストセラーシリーズ「指差し会話帳」の香港版。文字通り、話せずとも指をさせば、通じるというコンセプトですが、かなり実践的な内容なので、入門用の教材としても使えます。イラストがいっぱい入っていたり、香港のいろいろな文化を楽しみながら、学べるようになっています。

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