広東省の世界遺産を訪問 開平自力村
10月はじめ、国慶節で一週間、お休みをもらった。
一週間も休みがあるのであるから、どこか、遠いところにでも行けばいいようなものであるが、今回ばかりは、旅行熱というものがどこを振ってもまったく出てこない。かつて、4日以上連休があれば、すかさず旅へとくrだしていた自分からすればうそのようである。これもひとえに、年のせいかもしれない。旅行をしてもワクワクしないのだ。
まあ、そんなことで今回、旅がいやになったら、すぐに戻ってこれそうな場所ということで選んだのが、広東省の開平(かいへい)というところ。
中国に詳しくない方は、ご存じないかもしれないが、広東省唯一の世界遺産の街である。(2007年6月世界遺産登録)広東省に世界遺産というのも、何か意外な気がするが、その奇妙な建造物は一度間近に見てみたいと思っていたのである。
旅の出発は、深セン福田バスターミナル。このバスターミナルは、新装オープンしたばかりで一瞬、空港と見まごうばかりである。
天井はひたすら高く、フロアもぴかぴか。にもかかわらずフロアにつばを吐く人間がいる。どういう神経をしてるんだろうか。
深セン~開平は95元(1500円)
バスに乗って高速道路で3時間くらい。うとうとしているうちに到着してしまう。
この日は、開平市内のホテル90元(1400円)で一泊し、翌朝、市バスに乗り、終点の「赤坎」というところまで移動。4元(60円)
開平調楼は、市内から少し離れたところにあるので、何かしらの交通機関を利用して行かねばならない。<タクシーなら20~30元くらいか。>
以下、まず赤坎村の印象。
堤西路旧民居(欧陸風景一条街)」赤坎村
この村については、正直期待はずれであった。何か、写真で見たのと違う。いや同じものなのだろうが、少なくとも自分の頭の中で、勝手に膨らませていた風景とは根本的に?何かが違っていた。
東洋と西洋が融合したようなオリエンタル風な町並みが水面に映えてという東洋のベニス的あるいは、インドのガンジス河あたりの風景を想像していたのであるが・・・・・
「しょぼい・な・・・」
とにかく規模が小さい。本当に間口50メートルくらいに、ハーモニカの鍵盤のごとく並んでいるその部分だけなのだ。しかも前に普通の乗用車がとまっていて、日常の延長線といった感じ。
また、壁の質感なども、古くて重みがあるという感じよりは、単に薄汚い感じといったほうが近いであろうか。かろうじて、てっぺんの破風の装飾部分がそれらしさを演出しているというくらいか。
また、前の川も枯れて泥だらけ。これでは建物を水面に映し出すことができないし、この水量では当然ながら小船も通れない。
確かに、中国の普通の町を歩いていて、突然、こんな街並みに出くわしたら「あれ?何これ」ということになるのかもしれないが、最初から世界遺産ですよということが頭の中にインプットされていたので、期待が大きすぎたのかもしれない。
近くに行ってみると、ただの生活道路。
洗濯物が干してあったりと、観光地としての緊張感ゼロ。
関係ないが、大通りのど真ん中で昼ねをしている犬。不思議と車がよけて通っていく。
赤坎古镇 ストリートビュー
次、行くかな・・・・・・
そう考えて、街をぶらぶらしていると、中年の真っ黒に日焼けしたバイクタクシーの運転手が近寄ってきた。
「オイ、老板(ラオバン) どこ行く?」 (以下茶色:バイク男)
老板とは社長のことであるが、男に社長と呼ぶのは、万国共通である。
とりあえず無視して歩くと、どんどん近づいてくる。
「老板、聞いてるのか。お前のことだよ。調楼へ行きたいんだろう。そうだろう?自力村か?」
もうそこへ行くに決まっていると言わんばかりである。
このあたりはどうやら、バイクタクシーしか交通手段がないようである。
実を言えば、バイクタクシーにはあまり乗りたくないのであるが、
こんなところでウロウロしていてもしょうがないし、
こいつの世話になるしかないだろうとか何とか考えているうちに、
男はヘルメットをかぶって、すでにスタンバイ状態に入っている。
「乗れ!」 (後ろの座席をたたいている)
といっても相場がさっぱりわからない。とりあえず聞いてみる。
「で、いくら?」
「いいから、乗れ!!(まだ、たたいている)」
人の話を聞いていないようである。
聞いていないのか、聞いていないふりをしているのかわからない。
「だから、いくら??」
「これ、かぶっておけよ。」(ヘルメットを渡す)
ぜんぜん、話を聞いていない。
しかも、ヘルメット、小さすぎて頭に入らんし・・・・
しかし、ここで勢いのまま、まあいいかと乗ってしまうとダメである。こういうときは、先に値段を聞いておかないと、後々面倒なことになる。なおも行く気満々のバイク男を制して、まずは交渉のテーブルに着かせなければならない。
「調楼を見たいんだが、全部でいくらだ?(大声で)」
すると相手もやっと、こちらの意図を理解したようだ。
「まあ、そうさなあ・・・三箇所で120元(1800円)ってとこかな」
と言われても、この辺りの相場がさっぱりわからないのであるから、
どのくらいが妥当な線なのかよくわからない。
とりあえず、かなり高いことだけは間違いないので、高いといっておけばいいだろう。
「高いな」
すると当然ながら、すかさず反論してくる。
「どこが高いんだ。いいか、距離がかなり遠いんだ。まず開平第一楼行くだろ、
その次、馬○△▼×楼、行って、自力村行って・・・」
「イヤその馬何とかは、行かなくっていいよ。自力村と一番有名なあの何とかいうやつ。
その二箇所で十分。80元(1200円)でいいだろう。」
実際のところ、80元でも十分高いはずで、相場は多分40~50元くらいなのだろうが、
そこまで値切る必要もないだろう。
若干多めにしておいたほうが、何かと親切にしてくれるというのもあるし
高々、300円、400円の差で、がんばってみてもしょうがない。それに対し、彼らにとっては、
それが3000,4000円くらいの価値の差となってくるのだ。所詮、真剣さの度合いが違うのである。
「100元(1500円)でどうよ」
「ダメ。 」(立ち去りモードに)
「90元でいいよ。」
「おーーーい」(違うバイク野郎に声をかける)
「OK!老板(社長)」
OKなら、最初からそう言えよ。という感じであるが、
東南アジア、中国の地方へいくと、バイクタクシーがわらわら寄ってくるので、
いちいちこういう交渉をしなければならない。
中国でも自分が住んでいる深センなど、都市部では、タクシーに乗ったり、スーパーでも買い物を
したりするときでも、定価での売買が主流となってしまったが、農村部にくれば、まだまだ、
こういったやり取りをすることはめずらしくないだろう。
ちなみに広東語交じりではあるが、一応、中国人だから普通話(北京語)は通じることは通じる。
普段は地元民は開平語という地元言葉をしゃべるのであろうが
広東語が、一種の公用語のような感じになっていて、広東語は達者に話せるようである。
また、英語は片言ならOKであるが、日本語は、残念ながら100パーセント通じないといっていい。
通じやすさの具合で言えば、以下のとおりである。
開平語 > 広東語 > 北京語 >> 英語 >> 日本語
それでは出発。
開平は、調楼がいたるところに散らばっているのであるが、特に有名な場所は、何箇所かあって
すでに観光地化しているようである。
その中で、まず、開平第一楼と呼ばれる、「瑞石楼」を訪ねてみることにした。
こういう田舎を個人で旅するときは、私的にはバイクタクシーと相場が決まっているが、
今回は田舎の農道のようなところを、ガンガン飛ばしていくのでちょっとしたスリルである。
また、広い道に来ると、とたんにスピードを上げるので、風圧で息をするのもやっと。
以下、バイク上から写した写真。(危険なのでよい子の皆さんは真似をしないように・・・・)
このような道を、ガンガン駆け抜けていく。
農村地帯の中 忽然と門が現れる。
水牛。 現役でがんばっている。時折、道端ででっかい水牛のクソに遭遇するのはご愛嬌。
20分くらい揺られ揺られて、ちょっとこぎれいに整備された門前に着いたところ、
運転手が降りろという。どうやら到着したようである。
到着
↓
門前の小汚いががっしりとした造りの中国の城下町を通り抜けると
↓
忽然と何ともいえない形の調楼が
↓
門前まで来ると先客が。この赤い帽子。これは中国人団体客のしるし。
瑞石楼(開平第一楼)
本当は、団体客以外は入ることはできないようであるが、バイクの運転手が、門番のばあさんを何とか説得して、20元(300円)ばかりで、中に入ることができた。下は中の様子である。
人がやっと通り抜けられるくらいの階段を上っていく。
窓は、このとおり、全部、鉄格子。
各層は、8-10畳くらいの部屋が3部屋あってリビングルーム、寝室などに用途が分かれている。海外で一旗上げて帰ってきた華僑たちが、大家族で住んでいたことを思わせる調度品、写真などが壁いっぱいに飾られている。かなり大人数でも暮らせるような空間である。
内部を俯瞰
上層階で街を一望
ここから上に通じる小さな階段がついており、さらに上に上がれるようだ。
忍者屋敷のような趣の階段。
最上階(9階)は、立つだけで精一杯というだけの狭い空間。
誰か不審な奴が侵入してこないか見張り番でも居そうな雰囲気である。
住まいというよりは、もはやちょっとした城とか要塞という感じ。
も一度、外へ出て下の門前町を、少しだけ観察。
民家の門前にある線香たて
かわらの上にレンガを乗せている
このあたりの民家は、鶏を放し飼いにしてあり、鶏は丸々と太っている。鶏も気持ちいいだろう。
調楼周辺の様子 ストリートビューで
見終わった尻から、矢継ぎ早に次の目的地、自力村へ移動。
「○▼□、寄ってく?」
バイクの運転手が、お駄賃をかせぐため、あれこれオプショナルな提案をしてくるが、聞こえないふりをして無視。似た様なものを何個見ても、所詮、同じようなものである。
(というか、ものすごい揺れと風圧で、まともに返事できる状況ではない。
正直、振り落とされないように、しがみついているのが精一杯である。)
バイクにまたがること20分。ふらふらになりながら次なる目的地、自力村に到着である。
自力村
この自力村、その名前ともあいまって、写真を見たときから、一度は訪れてみたいなあと思っていた。
http://www.baxian-project.com/kaiping/tangkou/entry01.php#more
開平の歩き方 自力村 ~こうしてみると世界遺産の雰囲気十分であるが。写真効果というものか。
しかしである。
現実はそうは問屋がおろさないというか、旅行がいまや一大ブームになりつつある、ここ中国。しかも、この国慶節という大型連休、ゆっくりと世界遺産を楽しむような雰囲気ではないことは火を見るよりあきらかである。
案の定、門の前にたどり着いた時点で、すでに観光のにおいがぷんぷんしている。親子ずれ、カップル、団体観光客の赤い帽子をかぶった中国人がわらわら。馬鹿でかい普通話の話し声があちこちから聞こえてくる。
「自力村よ、お前もか!」
まあ、しょうがない。世界遺産に登録されたことを弾みに、地元民としても、この金のなる木をみすみす見逃すはずがないのである。
ちなみに自力村の中は有料 門票50元(750円)である。
以下、中の様子。
恐れ多くも世界遺産の碑の上に乗って、記念撮影。ええ根性しとる。
調楼群の前でポーズ
村のあぜ道というあぜ道を、観光客がうろうろ。
犬肉を食わせる店。広東省ではまあ普通かな
ウズラの小さい卵と、鶏の卵の3倍くらいありそうな卵。(一個2元(30円))
何の卵かなあと思っていたら、隣にガチョウ(鹅)がいっぱい。
以上、何か旅情を楽しむというような雰囲気ではないです。
国慶節に中国の観光地を訪れるということが、そもそもの間違いだったのかもしれません。
関係ない話であるが、ずっと前、インドのガンジス河に行ったとき、「ガンジス河のほとりで、ちょっと哲学でもしてみるか」的なノリで、聖なるガンジス体験をしようとして行ってみたのはいいが、実際に、焼くところを見ようとすると、拝観料?として10ドル必要だと言われ、気分が一気に萎えて「もういいや」と、その場を後にした覚えがある。
NHKの特集でやっているような、聖なるガンジスのイメージが、いっぺんに吹きとんでしまったのである。確かにNHKでやっているようなものも、それはそれで事実なのかもしれないが、現実なんて、案外しょーもないものである。
ま、そういうわけで、その後、すぐに帰途についた。
各地でこういった水郷の村を見かける。
広東省のこのあたりは珠江デルタとよばれるが、河の中洲に町や村があるようなもので非常に水に関して芳醇な土地であることを実感する。北京をはじめとする中国北部では、水不足、砂漠化が深刻であるとのことであるが、ここ広東省では無縁のようである。
自力村をストリートビューで
【参考】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8B%E5%B9%B3%E6%A5%BC%E9%96%A3%E3%81%A8%E6%9D%91%E8%90%BD 開平楼閣と村落 – Wikipedia
http://japanese.china.org.cn/culture/archive/kaiping/node_7020500.htm 開平の望楼
広東省開平 調楼と村落 周辺図
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